結論からいってしまえば、地下足袋もいいです!
ニッポンのマラソンは足袋からはじまったんですから!
が・・・
【地下足袋】の歴史からみてみよう。
タイヤメーカーのブリヂストン創業者、石橋正二郎氏が発明したのが【地下足袋】(1923年10月実用新案登録番号第80594号・張り付け式ゴム底足袋)です。
日本足袋株式会社のタイヤ部としてスタートしたのが、ブリヂストンです。
石橋=橋:ブリッヂ・石:ストーン→ブリヂストン
地下足袋は元々、炭鉱夫の作業用として愛用されていました。
当時、炭鉱作業は足袋に草鞋というスタイル。
草鞋は耐久性がなく、約1日でボロボロになってしまい、毎日自分で編んでいました。
買えば5銭。当時の賃金は日給1円ぐらいだったので、今でいうと日給8000円で400円ぐらいの感覚でしょうか。毎日だと結構な出費ですよね。
草鞋 5銭×300足=15円
足袋 20銭×年10足=2円
計:17円
1円50銭で販売されていた地下足袋は半年の耐久力があり、年2足=3円で済むようになったので、急速に広まったというわけです。
最近はおしゃれな柄の地下足袋がイギリスやフランスで【jikatabi】【Ninja Shoe】としてブームになっているみたいですが・・・残念ながら、忍者の時代に地下足袋はありません(笑)
大正〜昭和にかけて作業用で使われていたのが、地下足袋です。
足元を見直す流れで、地下足袋でランニングをする人も増えているみたいですが・・・まぁ最初は足のどこかが痛くなりますよね?(笑)
踵に水マメができたり、痛くなる方が多いように感じます。
慣れたら痛みはなくなりますが、最初の頃はへこたれてしまうかもしれませんね。
痛い=やっぱり地下足袋はダメだ・・・と早くに結論づけてしまいがちです。
そのためか、おしゃれ地下足袋のSOU・SOUでは踵用のインソールを販売しているぐらいです。
あくまでも地下足袋が悪いのではなく、みなさんの足が弱くなっているからですよ~(笑)
だって、ニッポンのマラソンの歴史は足袋からはじまったんですから(後述)
あと、痛くなる原因で考えられるのは歩き・走りのフォームの問題。
底が薄い分、もろに衝撃がくるので、
過剰に踵接地を意識したフォームだと、踵が痛くなります。
つま先接地だと甲が痛くなります。
痛みの箇所で修正ポイントが見えてきますね。
伝説の登山家・加藤文太郎も地下足袋を履いて山に登るスタイルで「地下足袋の文太郎」といわれていました。
また、100マイル(160km)のトレイルランニングレースで圧倒的な強さをみせたメキシコのタラウマラ族。
そのタラウマラ族が履いているサンダル(ワラーチ・ワラッチ)もペッタンコのタイヤ素材です。
そういう意味では『地下足袋もいいかもしれない・・・』と考えてしまいますが・・・
地下足袋自体は長時間の歩行や走りに向いていません。
今でも長時間の歩行で地下足袋を使っているのは、山師さんか山菜採りぐらいではないでしょうか?
それもスパイク地下足袋など、底が厚いタイプを使われているようです。
底が薄いタイプは庭師さんや大工さんなど、長時間の歩行というより、バランスを重視しているように感じます。
☆足半屋の考える、長時間の歩行での地下足袋の欠点
1.甲側のサイズを変えられない。既製品の地下足袋では隙間ができてしまう
足袋+わらじのスタイルでは、足袋は自分の足に合わせて仕立ててもらうことができます。そのため、こはぜで止めれば、ピッタリと履けます。
2.通気性・発汗性が悪い
ワラーチは素足で履く開放性の履物なのでいいのです。
閉塞性の履物で通気性が悪いと、足が蒸れて柔らかくなり、水マメの原因になりやすいです。
3.防水性
通気性とあわせて、濡れると蒸れます。
これらの欠点のため、長時間の歩行や走りにはむいていないと感じます。
・・・
1の欠点については、地下足袋の発明と同時期(91年前!)にすでに克服されていたのです。
それが1919年、日本マラソン界の父・金栗四三と「ハリマヤ」という足袋屋が開発した、紐付きゴム底足袋「カナグリ・タビ」です。
この写真は1924年に開催されたオリンピック、第8回パリ大会での金栗四三選手。足袋を履いている。
写真提供:秩父宮スポーツ博物館
1951年、ボストンマラソンに出場した田中茂樹選手は2時間27分45秒で、日本人初のボストンマラソン優勝。「カナグリ・タビ」を履いて世界を制したのです。
(日本はきもの博物館にて、足半屋撮影)
HARIMAYA(ハリマヤ)を語りたい。~その1
HARIMAYA(ハリマヤ)を語りたい。~その2
HARIMAYA(ハリマヤ)を語りたい。~その3
1953年には、アシックスの前身・鬼塚株式会社も【マラソン足袋】というのを出しました。
まさに、ニッポンのマラソンは足袋からはじまった!
そして・・・マラソン足袋はランニングシューズに主権を奪われ、1980年代にハリマヤも撤退・・・
しかし、【マラソン足袋】の遺伝子は生きていた・・・
2006年にアシックスが発表した、無重力空間用の運動靴があります。
アシックスは、宇宙飛行士が無重力環境で使う超軽量運動靴の試作品を発表した。宇宙空間では体重を支える必要がないために足の筋肉が衰えるが、この靴はそれを防止するよう工夫が施されている。足袋のように先が割れており、靴底に傾斜をつけ、つま先側が上がった形状になっている。かかと部分の素材は柔らかく、ソールの柔軟性も高いが、クッションの使用は最小限に抑えられている。重量は片足130グラム。
地下足袋の欠点も、布製マラソン足袋の欠点も、すべてクリアーになっている・・・
・・・これを一般発売して欲しい!!!
今はもっと洗練されていて、片手でひも締めができる構造になっている。
開発コンセプトは、「足を守る機能を最低限し、足が持つ本来の機能を引き出す構造」・・・やれば出来るんだから、一般発売しなさい(笑)
これがランニング用として発売されたら・・・日本のマラソンシーンは激変するだろう・・・
日本人が世界のマラソン大会で、足袋を履いて優勝する・・・かつてのようなことを夢見て・・・
アシックスの中の人、お願いします~